英語と身分とアイルランド語

The Language

これを知っていると、より面白い


©️ELICAMIWA

実は一口に英語といってもいろいろありまして。

それはちょうど、日本語に、東北弁や大阪弁、九州弁などがあるように。そしてここまで書いて既にお気づきのように同じ大阪弁と言っても、地域によって微妙な違いがあり、その地域に住んでいる人には、どこの人かがはっきりわかるように、英語にも同じ地域色があるのです。

アイルランドの大飢饉のせいで(おかげで)、アメリカ合衆国に大量の移民がアイルランドから渡った話をしました。(記事参照:救貧院とは)

ですから、例えばボストン辺りの発音は、かなりアイルランドに近いのです。

三輪えり花がロンドン大学にいた頃、とてもカジュアルなアメリカ英語を話す青年がいたので、あなたもアメリカからの留学生かと聞きました。すると、「いや僕、ダブリン」と言ったのです。その時に初めて私は「そりゃそうだ。アイルランドの移民がアメリカに多くいるのだから」と納得したのです。

Aプログラムの『月が昇れば』では、支配者側の言語であるイギリス英語を喋ろうとする人と、アイルランドらしい発音をしゃべる人とが混在します。アイルランド人は、アイルランド訛りを聞くとと、「ふるさとのなまりなつかし」と石川啄木が歌ったような気分になるのです。

一方、イギリスでは、地方による言葉のイントネーションの違いのほかに、身分による違いがあります(ここがどうしても日本語でなかなか訳しにくいところなのですが)。

イギリスには、身分を表す単語がありまして、アッパークラス(貴族階級から上)、ミドルクラス(中流の中産階級)、ワーキングクラス(労働者階級)と呼ばれます。この中で、ミドルクラスは、さらにアッパーミドルとロウワーミドルに分けられます。アッパーミドルは、貴族ではないけれども血統の良い人たち。ミドルミドルは、知的に独立して働く職業で、大学の教授や弁護士、医者などです。ロウワーミドルは会社で働く人たちいや、大学以外の学校の先生たち。そして、ワーキングクラスは、小さな商店、パン屋さんや駄菓子屋さんなどの店主から、工場労働者、農業や船舶、炭鉱などで働く人たち、掃除人や、公共の乗り物の運転士なども含まれます。

この枠組は、21世紀になって職業の選択肢の拡がりや「平等」という概念の発達によって、ずいぶん変わってきました。が、それでも、かなり多くの人たちが「自分のクラスは、これ」という感覚を持っていて、そのクラスで話される発音を守り続けるのです。

Bプログラムの『橋の上のワルツ』は、その辺を知りながらご覧になると、より楽しめるのではないかと思います。


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